ビタミンだって危ないぞ
ビタミンという名前は現在では当たり前のように使われている。
しかし、これにいくつかの偶然が加わったら…どうなったろうか?
イギリスでポーランド人であるカジミール・フンクによって最初に
発見されたビタミンはビタミンB1とされているが、鈴木梅太郎がかわいそうだ。
英語かドイツ語で発表してれば今頃オリザニンがさぁ…ってみんな
言ってたのだろうか?
彼がフンクに先駆けて発見していたビタミンB1であるが、日本って国は
こいつに日露戦争で振り回されたわけで。
(まぁ…誰が悪いとは言わないけどドイツで不倫とかしてた文学かぶれの
棒医者(ドラッグ反転→森鴎外)とかさぁ…そりゃ今だから悪いといえる
わけなんだけれども)
日本海軍は洋食に切り替えたりカレー始めましたやら肉じゃが作ってみたり
いろいろやったせいで(ただいろいろやりすぎてビタミンの存在には
気がつかなかったのだが、…それは別にいいんだけど)脚気はなくなったわけ
だけれど、陸軍は例の医師が洋食化に猛反発したせいで脚気がなくならなかった。
結局日露戦争の死者は戦死者と病気とどっちもどっちという有様になった。
いや、それどころか例の医師のせいで、年間数十万人が脚気にかかり、数万人が
死んでいったわけで…薬害エイズの比じゃねぇなこりゃ…
最終的に彼が死ぬまでビタミンB1(オリザニン)は圧力に晒され続け、脚気は
根絶されなかったというのは、なんというか酷い話だ。
…お前は小説だけ書いてろって言いたい。
オリザニンそのものは三共製薬が商品化していたのだが、彼の死後、爆発的に
売れるようになり、脚気も撲滅されていった。そして鈴木梅太郎の評価も
ようやく回復されたというわけである…一応よかったということだろうか。
さて、それはさておき、なんで先に見つかったのにビタミンBとB呼ばわりされるのか。
先に生まれたのに類似品呼ばわりされてルイージなんて名づけられたようなもんだろ?
下手したらぐれそうだ。(注:ルイージは実際に弟です)
初めてビタミンが発見されたのは1910年、その3年後のことである。
エルマー・ヴァーナー・マッカラムという学者が全然まったく性質の違う
ビタミンを発見したので困ったことになった。
結局、マッカラムが発見した方を「脂溶性A」と、フンクが発見したものを
「水溶性B」と名づけ分けたというわけである。実際の化学的性質は全然関係ない。
フンクはビタミンB1をビタミンと名づけたのには化学的性質、アミンと関連する
という意味があったのだが…ビタミンAはカロテノイドから誘導されるじゃん。
全然アミン関係ないだろうに…まぁこれも今だから言えるけど。
(ちなみにオリザニンは稲の学名であるOryza
sativa に由来する)
その後もビタミンは見つかり続ける。1920年にジャック・セシル・ドラモンド
がビタミンCを発見する。別名L-アスコルビン酸と呼ばれるこの物質、分子式
C6H8O6でブドウ糖から誘導される…からアミン関係ないじゃん。
でもこの頃には生存必須微量物質=ビタミンはすでに普通に使われている
言葉となってしまっていたのだ。ああ。
でD、E…と名づけられていった。ただ、一番多いのはビタミンB群で、一時的に
ビタミンB群以外の名前がついていたとしても最終的に統合されたものも多い。
そういう意味では、フンクの名づけ方はかなり的を射ていたのかもしれない。
で、ビタミンB群とかビタミンCは通常大量に飲んでも死なない。ないと死ぬけど。
水溶性なので全部尿として流れ出てしまう。無駄なのであんまり必要以上に
飲んでも仕方ないね。まぁ適当に、不足だけはしないように摂取してくれ。
ところがビタミンAは違う。むしろ逆にヤバイ。
ある意味一番危ないビタミンであるといえる。
長くなったがビタミンAがなぜ危ないのか説明していきたい。
まず妊婦が大量にビタミンAを摂取した場合催奇性がある。
必要摂取量750μgRE(レチノール当量)(約2500IU)に対し、4倍の3,000μgRE
摂取した場合胎児頭部の奇形の発生率が、1,500μg以下の場合に比べて
5倍以上であるという研究報告がアメリカで行われている。
また、なんと急性中毒すら起き得ることも明らかになっている。
300mgRE(約1,000,000IU)という膨大な量を摂取した場合、死ぬことすら
あるのだ。…っていうけどサプリメント一気飲みでもしない限りそんなの
無理じゃないのかとも思えるのだが…実は食品だけでも死ねる。
ビタミンAの前駆物質であるカロテノイドに関しては特に問題はない。
大量に飲んでもまず問題ないということが明らかになっている。
前駆物質でないビタミンAを摂取する場合…これは本気でヤバい。
鳥の肝臓を2kg程度食べると理論的にはこのあたりの値に到達する。
しかしだ、もっと含んでいるものがあってだな…
かつてある老夫婦が、アラという魚を手に入れ、その魚で鍋をした。
アラの肝鍋。これが実に旨かった。
そんで、巨大なその魚の肝臓、二人でほとんど食ってしまった。
その結果、急性ビタミンA中毒になって病院に運ばれてしまった。
下手したら死んでたかもしれない。
食中毒に似た症状を引き起こし、激しい頭痛がある。嘔吐や発熱も伴う。
長期的には全身の皮膚が剥がれ落ちる。
アラに限らずイシナギ、サメ、マグロ類などの南洋性の魚、鯨の肝臓なども
食べ過ぎると下手すりゃ死ぬ。気をつけてくれ。
特にイシナギの肝臓は食品衛生法上食っちゃだめ。
多分脂溶性という性質が問題なんだろうなぁ。
また、2週間で急性ビタミンA中毒のため亡くなった事例なども存在する。
いずれにしろビタミンAのとりすぎは本気で危ない、絶対やめるように。
…いや、正直なところ取りすぎで死んだ人間より不足して死んだ人間が
圧倒的に多いのがビタミンってもんですけど。
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